病名と治療

反復性肩関節脱臼

肩関節の障害・治療について

肩関節について

肩関節はヒトの関節の中で最も可動域の大きな関節です。肩甲骨の関節面と上腕骨の骨頭が関節を作りますが、骨の接触は非常に小さく“おちょこの上にテニスボール”“ゴルフのティーとボール”の関係に例えられます。よく動くかわりにとても不安定な関節で「脱臼」しやすい関節です。肩を安定させるために筋肉・腱・靭帯といった軟部組織が骨を覆っています。骨折をのぞけば、肩の障害はこの軟部組織が傷むことによっておこります。
 

関節鏡を用いた最小侵襲手術について

肩関節鏡手術体位

いろいろな疾患がありますが、まず基本は薬をもらって、リハビリで温熱治療して、痛い時は注射してもらうと大体良くなりますが、手術した方が早く確実に治る場合が多いです。今回は手術の中でも関節鏡を用いた最小侵襲手術のご紹介します。

関節鏡は診断や治療の目的で使われます。約20cmの長さで直径5mm程の細い筒状の内視鏡です。関節内に水を注入して、肩周囲に1cmの切開を数箇所あけて、関節鏡を関節内に挿入します。関節内の様子はテレビモニターに映し出され、これを見ながら細い専用機械を使って関節内の処理を行います。関節を大きく切開する従来の手術に比べて術後疼痛が少なく、周囲の筋肉もほとんど傷めない為リハビリもスムーズに進めることができます。当院では骨折や人工関節手術以外の肩の手術をこの関節鏡を使って行っています。

反復性肩関節脱臼の治療方法

スポーツや交通事故などで肩を下にして転倒したり、手をついたりして初回の脱臼がおこります。好発年齢は15~35歳です。ほとんどが前方・下方に脱臼し、重要な支持機構である前下方の関節唇、同部位の靭帯、関節包が損傷されます。肩の形態は“おちょこの上にテニスボール”と説明したように、おちょこの辺縁が欠けると上のボールは簡単に落ちてしまいます。肩が下記画像の様になっていると考えてください。特に20歳以下の若者は何度も脱臼を繰り返す確立が高く、80%を超えるとも言われています。この治療方法は基本的には手術をしておちょこの辺縁を修復してあげることが重要です。

CTによる肩甲骨関節窩の形態

  • 脱臼により関節窩の前下方の骨が欠損

  • 正常側は洋ナシ型の形状

手術方法もいろいろありますが、当院では「関節鏡視下バンカート法」と呼ばれる手術を行っています。正常な構造物を損傷せずに、脱臼により壊された関節包、靭帯、関節唇、骨を元の位置に戻して修復します。この際、糸のついた特殊なアンカーを数回使用します。(このアンカーは3年くらいで吸収され消えてしまうので抜く必要はありません。)従来おこなわれていた大きく切開(約8cm)する方法と、この関節鏡手術はどちらも5~10%の再脱臼が報告されていますが、術後の可動域制限は圧倒的に関節鏡手術が少なく、スポーツ復帰率も高くなっています。写真のようにキズは小さなもので女性からは美容上の面でも喜ばれています。

手術後1週、左肩

  • 前方

  • 後方

一覧に戻る

肩関節について